習性事典猫の目が光るのはなぜ?タペタムと瞳孔のしくみ
2026年9月30日・ネコキチ編集部
猫の目が暗闇でピカッと光るのは、網膜の後ろにあるタペタム(輝板・きばん)という反射層が、目に入った光を鏡のようにはね返しているからだ。はね返った光でもう一度網膜を刺激できるので、少ない光でも物が見えやすくなる。そのとき外に戻ってきた光が、人の目には「光る目」として見えている。
基本データ
| 項目 |
内容 |
| 光るしくみ |
網膜の後ろ(脈絡膜)にある反射層・タペタムが光をはね返す |
| タペタムのつくり |
15〜20層ほどの細胞の層。リボフラビン(ビタミンB2)などを含む結晶が光を反射する |
| 光る色の目安 |
黄緑〜黄色〜オレンジが多い。個体によってちがう |
| 人との比較 |
人の目にタペタムはない。猫は人が必要とする明るさの6分の1ほどでも見えるとされる |
| 瞳孔の形 |
明るい所では縦に細いすき間、暗い所では丸く大きく開く |
| 視力の目安 |
止まっている物を見る力は人より低く、0.2〜0.3ほどと言われる |
| ピントの合う距離 |
25cmくらいより近い物は合いにくく、物を見分けられるのは10mほど先までといわれる。近すぎる物はひげで感じて補う |
しくみ
タペタムは「目の中の反射板」
目に入った光は、網膜の視細胞に吸収されて「見える」信号になる。ただ、すべての光が吸収されるわけではなく、一部は網膜を通りぬけてしまう。猫の目では、その通りぬけた光をタペタムがはね返し、網膜にもう一度チャンスを与える。光る目は、この反射の一部が外に戻ってきたものだ。
このしくみは猫だけのものではなく、犬や多くの脊椎動物にもある。いっぽう人を含む昼行性のサル・類人猿の仲間にはない。
暗い所に強い理由は、タペタムだけではない
猫の網膜には、弱い光を感じる視細胞(桿体・かんたい)が人より多い。さらに暗い所では瞳孔を大きく開いて、光をたくさん取りこむ。反射層・視細胞・瞳孔の3つがそろって、薄暗い所でも動けるようになっている。
代わりに、反射した光がわずかに散るため、細かい所まではっきり見る力(視力)は少し犠牲になっていると考えられている。猫は、くっきり見るより「暗くても動きをとらえる」ほうに寄せた目を持っている。
瞳孔が縦に細くなる理由
猫の瞳孔は、明るい所では縦長のすき間のように細くなる。縦長の瞳孔は、丸い瞳孔より大きく開け閉めできるので、昼のまぶしさにも夜の暗さにも対応しやすい。
縦長の瞳孔には、もう一つの利点があるという説が有力だ。低い姿勢から獲物との距離を測るとき、縦の線がくっきり、横の線はぼけて見えることで、距離をつかむ手がかりが増える、というものだ(下の研究を参照)。
気持ちでも瞳孔は変わる
瞳孔は明るさだけでなく、気持ちでも変わる。おもちゃに夢中になったとき、驚いたとき、こわいときなどは、明るい所でも瞳孔がまん丸に開くことがある。耳が横に倒れ、瞳孔が開いているときは、不安や不快を感じているサインのことが多い。
研究とデータ
| 研究・資料 |
内容 |
| 瞳孔の形の研究(2015年) |
カリフォルニア大学バークレー校とダラム大学の研究。陸上の動物214種の瞳孔の形と暮らし方を比べた。縦長の瞳孔は、待ちぶせ型の捕食者で、昼も夜も活動する動物に多かった。正面に目がある待ちぶせ型の捕食者65種のうち44種が縦長の瞳孔で、縦長の瞳孔を持つ動物の82%は肩の高さが42cm未満だった |
| 同じ論文が紹介するデータ |
瞳孔の面積の変化は、猫が約135倍なのに対し、人の丸い瞳孔は約15倍ほど |
| 白猫とシャム猫の目の色素(1980年) |
青い目の白猫は、原則としてタペタムがなかった。黄色い目の白猫の目の色素は正常だった。シャム猫は目の奥の色素が少なかった |
| 暗い所での見え方 |
人が必要とする明るさの16%ほどで見えるとテネシー大学の獣医眼科医が紹介している。国内の獣医師も「6分の1ほど」と解説している |
数字はどれも研究や解説の目安で、猫によって幅がある。
猫種・年齢・性別による違い
- 子猫:目が光る色は子猫のうちは青っぽく、成長とともに黄色〜オレンジ〜緑へ変わっていくとされる
- 青い目の猫:青い目の白猫はタペタムがないことが多いという研究がある。青い目の猫は暗い所で写真を撮ると赤く光ることがあり、目の奥の血管の色が見えているためと説明される。シャムなど、ポイントカラーで青い目の猫種も目の奥の色素が少ない
- 年齢:年をとると水晶体の密度が増し、光り方が弱く見えることがある
- 性別:オスとメスで光り方がちがうという話は、はっきりしていない
どの色に光っても、その猫の目としてはふつうのことだ。
よくある誤解
- 「猫の目は自分で光っている」:光を出しているのではなく、入ってきた光をはね返しているだけ。真っ暗で光がまったくない所では光らないし、猫にも見えない
- 「猫は真っ暗でも見える」:少しの光で見えるのであって、光がゼロなら見えない。そのぶん、ひげや耳を使ってまわりを感じとっている
- 「猫は色がわからない」:白黒の世界ではない。人と同じ色の見え方ではないが、青や緑は見分けられるとされる
- 「赤く光るのは病気」:青い目の猫では、赤く見えるのはよくあること。それだけで病気とは言えない
飼い主向けメモ
- 写真の目の光りを抑えたいときは、フラッシュを使わずに部屋を明るくする。フラッシュで一度瞳孔を細くしてから、すぐもう1枚撮る方法もある
- 夜中の暗い部屋でも猫は動けるが、段差や物の出しっぱなしには気をつける。高齢の猫は特に
- 明るい所でも瞳孔が開いたままのとき、左右の瞳孔の大きさがちがうとき、物にぶつかるようになったときは、早めに動物病院へ。網膜の病気、緑内障、白内障のほか、腎臓病や甲状腺機能亢進症(それに伴う高血圧)が関わることもあるとされる
- 目のにごり・充血・目やにが増えた、目をしょぼしょぼさせる、といった変化も受診の目安
- タウリンが不足すると網膜が傷むことがある。ごはんは総合栄養食を基本にする
関連項目
金色に光る目も、緑に光る目も、赤く光る青い目も、暗がりでこっちを見ているのはいつものあの子だ。猫好きは、結局ぜんぶの猫が好き。
出典・参考資料
※性格や体の特徴には個体差があります。健康について気になるときは、動物病院に相談してください。