江の島は、湘南の海に突き出た周囲4kmほどの島だ。江島神社や展望灯台で知られる観光地だが、猫好きのあいだでは「都心からいちばん近い猫島」としてもおなじみ。参道の裏や岩場、植え込みのかげで、猫が日なたぼっこをしている。
船はいらず、駅から橋を歩いて渡れる。新宿から1時間ほどなので、思い立った日に行ける「猫の旅」だ。この記事では、島の歴史と猫を見守る人たちの取り組み、電車の時刻から組んだ日帰りコース、費用、マナー、よくある質問までをまとめた。
基本データ
| 項目 |
内容 |
| 場所 |
神奈川県藤沢市江の島1丁目・2丁目 |
| 大きさ |
面積0.41km²、周囲約4km、いちばん高いところで60.4m |
| 人口 |
292人(2023年9月1日、Wikipediaに載る藤沢市の数字) |
| 猫の数 |
今の正確な数はわかっていない(2024年の地元紙) |
| 猫との関わり |
1980年代から猫が増え、猫島として知られる。ボランティアのTNR |
| 渡り方 |
片瀬江ノ島駅から江の島弁天橋を歩いて渡る(船は不要) |
| 藤沢市の観光客 |
2025年は約2,149万人で過去最高(藤沢市) |
| 主な施設 |
江島神社、江の島岩屋、シーキャンドル、サムエル・コッキング苑 |
| 東京から |
新宿から小田急で約1時間〜1時間15分 |
| 往復の費用 |
新宿から約1,300円(フリーパスなら1,640円) |
歴史・由来
歩いて渡れる島
江の島は、陸と砂州でつながった島だ。Wikipediaによると、その砂州は約600m。江島神社の案内によると、鎌倉幕府がまとめた『吾妻鏡』には、潮が引いたときに片瀬の浜から江の島まで歩いて渡った、という記述がある。今は歩行者用の江の島弁天橋(今の橋は1958年完成)と、車用の江の島大橋(1962年開通)が島と陸を結んでいる。
1964年の東京オリンピックではヨット競技の会場になり、港の建設や埋め立てで島の面積は約1.5倍に広がった(Wikipedia)。
弁財天の島
江島神社は、奥津宮・中津宮・辺津宮の3つのお宮に、三姉妹の女神を祀る神社だ。公式サイトによると、古くは江島明神と呼ばれ、仏教と結びついて弁財天として信仰されるようになった。安芸の宮島、近江の竹生島と並ぶ「日本三大弁財天」の一つで、江戸時代には江の島詣での人々で大にぎわいだったという。Wikipediaには、1182年に源頼朝の祈願で文覚が弁才天を勧請したことが書かれている。
島のいちばん奥にある岩屋は、江の島の信仰が始まった場所とされる。藤沢市観光公式サイトによると、弘法大師や日蓮も修行したと伝わる海食洞窟で、奥行き152mの第一岩屋と56mの第二岩屋がある。
観光客の移り変わり
藤沢市の資料によると、市の観光客は1989年に約858万人。2024年には初めて2,000万人を超え、2025年は約2,149万人と過去最高を更新した。江の島はその中心だ。人が増えるほど、猫の暮らしと観光の付き合い方が大事になる。
江の島の猫と、見守る人たち
1980年代から増えた猫
Wikipediaによると、江の島では1980年代から野良猫が増え、猫に会える島として知られるようになった。今はTNR(捕まえて不妊手術をし、元の場所に戻す活動)とエサ場の管理が行われている。島には「犬や猫を捨てないで」という看板も立っている。
TNRの募金箱と、冬の猫ハウス
2024年1月のタウンニュース藤沢版によると、島にはボランティアによるTNRの募金箱がある。ただし、猫の数など詳しい実態はわかっていないという。
同じ記事では、島で旅行者向けの宿を営む建築士の近藤航宇さんが、猫のための断熱ハウスをつくる計画を紹介している。毎日のように庭を横切る猫を見ていて、春先になると顔ぶれが変わることに気づいた。厳しい冬を越せない子猫や、病気やけがの猫がいるからだ。ハウスはヒーターつきで4匹分を想定し、既製品より断熱性と丈夫さを高めたもの。クラウドファンディングの目標額30万円は、期限前に達成された。
島の人の悩みも
同じ記事は、エサやふん尿の問題に困っている島の人もいると伝えている。近藤さんは、猫を守りたい人も困っている人も、野良猫をこれ以上増やしたくないという点では同じだと話している。猫に会いに行く人は、迷惑をかけない訪ね方をすることが大切だ。
藤沢市の不妊手術の補助
藤沢市は、市内の人が猫に不妊・去勢手術を受けさせるとき、費用の一部を補助している。飼い主のいない猫ならオス6,000円・メス8,000円で、1世帯につき年度内3匹まで(2026年10月時点)。手術は藤沢市獣医師会の会員の動物病院で受ける。市内の人向けの制度なので、旅行者が使えるものではないが、島の外でもこうした仕組みが猫を支えている。
見どころ
島の奥(稚児ヶ淵へ向かう道)
参道のにぎわいから離れた島の奥。人の少ない場所のほうが、猫ものんびりしている。稚児ヶ淵の先には岩屋がある。
江島神社と奉安殿
辺津宮の境内にある八角のお堂・奉安殿には、国の重要文化財の八臂弁財天と、裸弁財天の妙音弁財天が祀られている。拝観は8:30〜16:30で、大人200円・中高生100円・小学生50円(2026年10月時点)。
江の島岩屋
島の最奥の海食洞窟。ろうそくの明かりに照らされた石像や岩壁が続く。料金は中学生以上500円・小学生200円で、9:00〜17:00(季節によって変わる)。2017年の台風21号のあと、2018年4月まで閉鎖されたこともある。荒天の日は閉まることがあるので注意。
シーキャンドルとサムエル・コッキング苑
島の頂上にある展望灯台がシーキャンドル。まわりのサムエル・コッキング苑は9:00〜17:00なら無料で入れる。シーキャンドルは大人800円・小学生400円。
山二つと龍宮
江島神社の案内によると、山二つは大きな海食洞の天井が落ちた跡で、上から見ると山が二つに分かれているように見える。奥津宮のとなりの龍宮(わだつみのみや)は1993年に建てられたお宮で、岩屋の真上にあたる。
モデルコース
電車の時刻は2026年10月の時刻表データ(Yahoo!路線情報で検索、土曜日の例)で確かめた。小田急線は本数が多いので、時刻は一例として見てほしい。
日帰り(島の端から端まで)
| 時刻 |
行程 |
| 8:10 |
新宿から小田急線の快速急行 |
| 9:10 |
藤沢で江ノ島線に乗り換え |
| 9:16 |
片瀬江ノ島駅。弁天橋を渡る |
| 9:35 |
青銅の鳥居から参道へ |
| 10:00 |
辺津宮、奉安殿、中津宮(エスカーも使える) |
| 11:00 |
サムエル・コッキング苑とシーキャンドル |
| 12:00 |
昼ごはん |
| 13:00 |
山二つ、奥津宮、龍宮。島の奥で猫を探す |
| 14:00 |
稚児ヶ淵と岩屋 |
| 15:30 |
来た道を戻る。帰りに新江ノ島水族館へ寄ってもいい |
| 17:00 |
片瀬江ノ島駅から帰る |
江島神社の案内によると、片瀬江ノ島駅から弁天橋を渡り終えるまで15〜20分、辺津宮から中津宮まで約5分、中津宮から奥津宮まで約10分、奥津宮から岩屋まで約10分。帰りは同じ道を戻ることになる。
半日コース
猫に会うのが目的なら、参道を抜けて島の奥(奥津宮〜稚児ヶ淵)だけを往復するなら、3〜4時間が目安。午前中に着いて昼すぎに帰る、という使い方もできる。
東京からの行き方と費用
| 区間 |
時間 |
運賃 |
| 新宿→片瀬江ノ島(小田急) |
約1時間〜1時間15分 |
IC 649円 |
| ロマンスカー利用 |
- |
特急料金700〜750円を追加 |
| 東京→藤沢→片瀬江ノ島(JR+小田急) |
約1時間 |
IC 1,201円 |
| 片瀬江ノ島駅→島の入口 |
徒歩15〜20分 |
- |
運賃は2026年10月時点。小田急線の運賃とロマンスカーの特急料金は小田急の公式料金表による(特急料金はチケットレス700円、通常750円)。JR経由の運賃はYahoo!路線情報の表示。
江の島・鎌倉フリーパス:新宿から買うと大人1,640円・こども430円で、1日有効(小田急の公式)。新宿〜藤沢の往復に、藤沢〜片瀬江ノ島の小田急線と江ノ電全線の乗り降り自由がつく。江の島だけなら普通に往復したほうが安いが、鎌倉にも足をのばすならお得になる。
費用の目安:新宿から往復約1,300円(IC)。島内でエスカーとシーキャンドルを使うなら、セット券(大人1,100円)を足して2,400円ほど。岩屋(500円)と奉安殿(200円)も入れて3,100円前後。
島の坂をラクにするエスカー
江の島は坂と石段が多い。屋外エスカレーターの「エスカー」は3区間に分かれていて、1区が朱の鳥居〜辺津宮、2区が辺津宮〜中津宮、3区が中津宮〜頂上。全区間で大人500円・小学生250円。シーキャンドル、サムエル・コッキング苑、エスカーがセットになった券は大人1,100円・小学生550円(2026年10月時点)。
ベストシーズン・猫に会いやすい時間
- 春と秋:歩きやすい。島を端から端まで回るなら、この季節がいちばんだ
- 夏:海水浴の季節で人が多い。7月には八坂神社の例祭(江の島天王祭)があり、神輿が海に入る(2026年は7月12日)
- 冬:空気が澄んで景色がいい。ただ、猫には厳しい季節で、冬を越せない子猫もいる(2024年の地元紙)
- 平日の朝:混み具合のデータは公式にはないが、一般論として人が少ない時間のほうが落ち着いて歩ける
猫に会いやすい時間や季節は、公式の出典では確認できない。一般論として、猫は朝と夕方に活発になることが多い。人でにぎわう昼間の参道より、静かな島の奥のほうが猫に出会いやすいかもしれない。
持ち物
- 歩きやすい靴:坂と石段、岩場の道が続く。岩屋への道は海ぞい
- ICカードと小銭:小田急もエスカーも、岩屋の入場も
- 飲み物:夏は石段の上り下りで汗だくになる
- 上着:海に囲まれた島なので、風が強い日もある
- 猫を応援したいなら小銭を少し:島のTNRの募金箱へ
訪ねるときのマナー
- 勝手にエサをあげない。食べ残しは島の人の迷惑や、猫の体調不良の原因になる
- 猫を触らない、抱き上げない。猫が近づいてきても、そっと見守る
- 猫を捨てるのは犯罪(動物愛護管理法)。看板のとおり、絶対にしない
- 住宅や店の裏に入りこまない。島には300人近い人が暮らしている
- 神社は祈りの場所。境内では静かに
- 猫を応援したいなら、島の募金箱へ
よくある質問
Q. 猫にエサをあげてもいい?
勝手にあげないこと。島ではボランティアがエサ場を管理していて、エサやふん尿に困っている島の人もいる(2024年の地元紙)。見るだけにしておこう。
Q. 猫は今もたくさんいる?
正確な数はわかっていない、と2024年の地元紙は伝えている。ボランティアのTNRは続いているが、何匹いるかを数えた公的な記録は見当たらない。会えたら幸運、くらいの気持ちで歩きたい。
Q. 東京から日帰りできる?
できる。新宿から小田急で約1時間、片道649円(IC)。朝に出れば、島の奥の岩屋まで回っても夕方には帰れる。
Q. 雨の日でも楽しめる?
楽しめるが、石段と岩場は滑りやすい。猫も軒下に隠れてしまう。岩屋は荒天時に閉まることがある。シーキャンドルからの眺めも雨では期待できないので、晴れの日に行くのがおすすめだ。
Q. 子ども連れやペット連れでも行ける?
子ども連れなら、エサやりや抱っこはしない約束をしてから行こう。坂がきつければエスカーが便利(小学生は半額)。ペット連れについての島全体の決まりは公式サイトでは確認できなかった。猫が多い島なので、犬を連れて猫に近づくのは避けたい。
Q. 鎌倉と一緒に回れる?
回れる。江ノ電で鎌倉まで行けるので、江の島・鎌倉フリーパス(新宿から1,640円)を使えば、江の島と鎌倉を1日で回れる。
合わせて行きたい周辺スポット
- 新江ノ島水族館:江の島の帰りに寄りやすい水族館。大人2,800円で、9月24日〜11月30日は9:00〜17:00(最終入場16:00)
- 江ノ電で鎌倉へ:フリーパスなら江ノ電全線が乗り降り自由
- 杉山検校の足あと:江島神社の境内に、鍼の名人・杉山和一(検校)の墓と、藤沢宿から江の島までの参道に建てた48基の道標の一つが残っている
- 青銅の鳥居と参道:鳥居は1747年に建てられ、1821年に再建された。江戸時代から幅の変わらない参道に店が並ぶ
編集部のひとこと
海と猫と夕日。近くて行きやすいぶん、たくさんの人が訪れる島だからこそ、一人ひとりのマナーが猫の暮らしを左右する。冬の猫ハウスの話を読むと、見えないところで猫を支えている人たちがいることに気づく。会えた猫には、そっと手を振るくらいでちょうどいい。
関連項目