田代島は、宮城県の牡鹿半島の沖に浮かぶ小さな島だ。島の真ん中には猫を祀った「猫神社」があり、港を降りると猫が出迎えてくれる。日本の猫島の代表格として、海外からも人が訪れる。
漁師たちは昔、猫のしぐさで天気や漁の良し悪しを占ったという。猫を「かわいい」より先に「ありがたい」存在として大事にしてきた島だ。この記事では、島の歴史と猫の暮らし、時刻表から組んだ東京からのモデルコース、費用、持ち物、よくある質問までをまとめた。
基本データ
| 項目 |
内容 |
| 場所 |
宮城県石巻市 田代島。旧北上川の河口から南東へ約17km |
| 集落 |
南の仁斗田(にとだ)と北の大泊(おおどまり)の2つ |
| 大きさ |
面積2.92km²、周囲11.5km、いちばん高い所で96m |
| 人口 |
42人(2026年3月末、住民基本台帳)。2020年の国勢調査では43人 |
| 高齢化率 |
69.8%(2020年国勢調査、宮城県の離島振興計画) |
| 猫の数 |
正確な数はわかっていない。島民より多いとも言われる(石巻市)。ANAの旅行ガイドでは「100匹を超す」 |
| 観光客 |
2015年に約3万9千人、2020年度は約1万4千人(宮城県) |
| 船 |
網地島ライン、石巻から片道1,250円、1日3便(現金のみ・予約不可) |
| 食事処 |
3軒。営業はおおむね10〜15時(パンフレット) |
| トイレ |
仁斗田港に公衆トイレ |
| 宿 |
民宿2軒とマンガアイランド(4月〜10月末) |
| 東京から |
新幹線+JR+船で約4時間が目安 |
| 往復の費用 |
日帰りで約2万7千円(新幹線指定席の場合) |
島は三陸復興国立公園の一部で、国土交通省の「島の宝100景」にも選ばれている。黒潮の影響で暖かく、真冬でも月の平均気温が0度を下回らないという(石巻市のパンフレット)。
歴史・由来
養蚕と大網漁が、猫を大事な存在にした
石巻市によると、島ではかつて養蚕が盛んで、カイコのマユをネズミから守ってくれる猫が大事にされた。その後、猫は魚が手に入る漁師の番屋のまわりに集まるようになった。最盛期には大謀網(だいぼうあみ)と呼ばれる大きな定置網が7か所あり、地元の人に加えて気仙沼などからも漁師が来て、番屋を拠点に漁をしていたという。
漁師たちは猫のしぐさを見て、その日の天気や漁の具合を占った。猫は大漁を招く縁起のいい動物になり、「大漁の守り神」と呼ばれるようになった。
猫神社の言い伝え
島の中央にある猫神社(美與利大明神)には、こんな言い伝えがある。網に付ける重りの石を切り出していたとき、崩れた岩が当たって猫が死んでしまった。網元がその猫を手厚く葬ったのが始まり、というものだ。小さな石の祠に、猫の置物や石がたくさん供えられている。
パンフレットの地図には、ほかにも「化け猫ポンタ」「カッパの恩返し」「大タコとおとが洞」など、島に伝わる昔話のゆかりの場所が載っている。猫の話は神社だけではないのだ。
もっと古い歴史と、人口の移り変わり
仁斗田貝塚からは縄文時代の土器や石器、骨角器が見つかっていて、宮城県の文化財に指定されている。宮城県は、岩礁にすむ貝を主体とした縄文時代中期の貝塚で、全国的にも珍しいとしている。
田代島は1957年に離島振興法の対象になった。宮城県の離島振興計画によると、2010年から2020年の10年間で島の人口は46.9%減った。2020年の国勢調査で島で働く人は23人、うち13人が漁業などの第一次産業。今もカキの養殖が営まれている。
| 時点 |
人口 |
出典 |
| 2020年10月 |
43人 |
国勢調査 |
| 2024年3月末 |
48人 |
石巻市のパンフレット |
| 2026年3月末 |
42人 |
石巻市(住民基本台帳) |
島の小・中学校はすでに閉校し、診療所は週2日(火曜の午後と水曜の午前)だけ開く。
猫の暮らしと保護活動
島の人が世話をしている
石巻市のパンフレットによると、猫は世話をしている人たちからエサをもらっている。そのため来島者のエサやりは遠慮してほしいと書かれている。猫たちの健康のため、という理由だ。
島の施設「島のえき」も2026年8月、公式のXで改めてお願いを出している。要点は次のとおりだ。
- 観光客は猫にエサを与えない、が島全体のルール
- 島内でエサを売っている場所があっても、それはその場所にいる猫に限って与える前提。買ったエサを別の場所の猫にあげたり、余りをまいたりしない
- どの猫がいつどれだけ食べたかを世話をする人が把握できないと、食欲の変化から病気に気づけなくなる
- 道路の上でエサをあげると、猫が夢中になって車をよけなくなり危ない
- 余ったエサは、買った場所へ「猫たちへの寄付」として返してほしい
田代食堂も同じ日に、店の前の「エサガチャ」は食堂前の猫限定で、島のほかの場所でのエサやりは禁止だと呼びかけた。
島に犬を連れて行けない(介助犬などを除く)のも、猫を大事にする島ならではの決まりだ。
不妊手術の数や、猫の健康管理を誰がどのくらいしているかといった具体的な数字は、市や県の公式資料では確認できなかった。
震災と「にゃんこ・ザ・プロジェクト」
2011年の東日本大震災では、仁斗田港と大泊港が被害を受けた。宮城県石巻保健所の広報紙によると、漁港や船、漁具が流され、住民の流出も続いた。そこで漁師と島民の有志が立ち上げたのが、一口支援の基金「田代島にゃんこ・ザ・プロジェクト」だ。
メディアで紹介されると支援者が一気に増え、3年かかると見込んでいた1億5千万円の目標が、3か月で集まったという。カキと猫という島の資源が、復興の手がかりになった。
「猫島」の観光と課題
宮城県の離島振興計画によると、震災で大きく減った観光客は2015年に約3万9千人まで戻った。その後コロナ禍で、2020年度は約1万4千人に減っている。計画には、ごく一部の観光客のマナーが悪く、島民から改善を求める声が出ていることも書かれている。2018年からは電気通信大学の研究室が島の人と組んで、観光ポータルサイトを作るなどの取り組みもあった。
見どころ
- 猫神社:島の中央、森の中の小さな神社。猫の安全と大漁を願う
- 仁斗田港・大泊港のまわり:船の時間に合わせて猫が集まることがある
- マンガアイランド:ちばてつやさん、里中満智子さんら漫画家がデザインした猫のロッジがあるキャンプ場(4月〜10月末)
- 三石観音:海から上がった観音様の言い伝えがある
- 仁斗田貝塚:宮城県指定の縄文時代の貝塚
- 太平洋を一望できる展望スポット:パンフレットの地図に載っている
島は平らな道が少なく、坂がきつい。宮城県も、島内の道は急な坂や狭い所が多いとしている。パンフレットでは、仁斗田港から各スポットまで徒歩20〜50分(1.5〜3.3km)ほどと案内されている。マンガアイランドではマウンテンバイクと電動自転車を借りられる。
モデルコース
船の時刻は網地島ラインの公式ダイヤ(2026年10月中旬からの通年ダイヤ)、JRの時刻はジョルダンの検索結果(2026年10月)による。どちらも変わることがあるので、出発前に公式で確かめてほしい。
船は石巻→大泊→仁斗田の順に寄り、帰りは仁斗田→大泊→石巻の順。行きに大泊で降りて、島を歩いて縦断し、仁斗田から帰ると効率がいい。
東京から日帰り(島に約2時間)
東京を朝いちばんに出ても石巻着は9時台で、9:00の船には間に合わない。日帰りなら昼の便で渡る。
| 時刻 |
行程 |
| 6:32 |
東京駅から新幹線こまち1号 |
| 8:20 |
仙台で仙石東北ライン快速に乗り換え |
| 9:21 |
石巻駅。昼まで石巻の街を見て回る |
| 12:30 |
中央発着所から船(駅から徒歩15分) |
| 13:34 |
田代島・仁斗田港。猫神社まで歩く |
| 15:30 |
仁斗田港から船 |
| 16:27 |
中央発着所。駅へ急ぐ |
| 16:53 |
石巻駅から仙石東北ライン快速 |
| 18:22 |
仙台からはやぶさ110号 |
| 19:56 |
東京駅 |
中央発着所から石巻駅までは26分しかない。帰りの乗り換えには余裕を見ておこう。
1泊2日(島に約6時間)
前の晩に石巻に泊まれば、朝9:00の船に乗れる。
| 時刻 |
行程 |
| 1日目 |
東京から石巻へ。石ノ森萬画館や震災の伝承館に寄る |
| 9:00 |
中央発着所から船 |
| 9:36 |
大泊港で降りる。島を南へ歩いて猫神社へ |
| 昼 |
仁斗田側の食事処でお昼(営業日を確かめておく) |
| 15:30 |
仁斗田港から船 |
| 16:27 |
中央発着所 |
| 19:56 |
東京駅(帰りは日帰りコースと同じ) |
島に泊まるなら、民宿2軒かマンガアイランドへ。民宿はどちらも電話で事前に相談する形だ。
ドック期間のダイヤに注意
2026年9月24日から10月中旬ごろまでは、船の点検のため「ドックダイヤ」で運航している。この間、仁斗田から石巻へ戻る便は7:55、11:06、14:36の3本で、夕方15:30の便はない。10月中旬に行く人は、どちらのダイヤか必ず確かめよう。
東京からの行き方と費用
船の時刻(2026年10月中旬からの通年ダイヤ)
| 中央発 |
大泊着 |
仁斗田着 |
| 9:00 |
9:36 |
9:44 |
| 12:30 |
13:24 |
13:34 |
| 15:30 |
16:06 |
16:14 |
| 仁斗田発 |
大泊発 |
中央着 |
| 7:55 |
8:02 |
8:42 |
| 13:55 |
14:02 |
14:40 |
| 15:30 |
15:35 |
16:27 |
石巻側は中央発着所と門脇発着所の2か所から乗れる(門脇は中央の約10分後に出る)。石巻駅から歩くなら中央発着所が近く、徒歩15分。車なら門脇発着所を使う。16:51に鮎川を出る最後の便は仁斗田止まりで、石巻へは戻らない。天候で直前に欠航したり、寄る港が変わったりすることもある。
費用の目安(大人1人)
| 区間 |
片道 |
往復 |
| 東京→石巻(新幹線指定席+JR) |
12,290円 |
24,580円 |
| 石巻→田代島(船) |
1,250円 |
2,500円 |
| 合計 |
13,540円 |
27,080円 |
JRはジョルダンの表示(運賃6,930円+指定席特急料金5,360円、2026年10月時点)。季節や予約方法で変わる。船の運賃は網地島ラインの公式で、小学生は片道640円。船は現金のみで、クレジットカードや電子マネーは使えない。予約はできず、当日の先着順で、満席なら次の便になる。
田代島と隣の網地島の両方に行くなら、7日間有効の「フリークーポン」(大人3,150円)もある。石巻から両島への往復と、島どうしの行き来が含まれる(鮎川は除く)。
ベストシーズン・猫に会いやすい時間
- 4月〜10月:マンガアイランドが開いている期間。島に泊まりたいならこの時期に
- 夏:坂が多く日陰も少ないので、暑さ対策が必要
- 冬:気候は比較的穏やかとされるが、海が荒れると欠航しやすくなる。宮城県も、田代島は欠航率が高いことを課題に挙げている
猫に会いやすい時間や季節は、公式の出典では確認できない。一般論として、猫は朝や夕方に活発になることが多い。日帰りだと島にいられるのは昼すぎの2時間ほど。朝の港の猫を見たいなら、島に泊まるのがいちばんだ。
持ち物
- 現金:船は現金のみ。島の店でもカードが使えるとは限らない
- 飲み物と軽食:食事処は3軒で、営業は昼間だけ。休みの日もある
- ゴミ袋:ゴミは持ち帰る
- 歩きやすい靴:坂がきつく、港から猫神社まで20分以上歩く
- 帽子・雨具:日陰の少ない道が続く
- 帰りの船の時刻のメモ:乗り遅れると、その日のうちに石巻へ戻れない
- エサは持っていかない:世話をする人がいるので、来島者のエサやりは遠慮するよう求められている
訪ねるときのマナー
- 来島者のエサやりは遠慮する(石巻市のパンフレット)
- 犬は島に連れて行けない(介助犬などを除く)
- 野宿、決められた場所以外のキャンプ・バーベキュー・火起こしは禁止
- 銛やヤスなどの漁具の持ち込み、遊泳も禁止されている(網地島ライン)
- 集落は島の人の暮らしの場所。家の敷地や番屋に入らない
- 猫を追いかけない。眠っている猫は起こさない
よくある質問
Q. 猫にエサをあげてもいい?
あげないでほしい。石巻市は、猫は世話をしている人からエサをもらっているので、来島者のエサやりは遠慮してほしいとしている。島のえきも2026年8月、島全体のルールとして観光客はエサを与えないよう改めて呼びかけた。田代食堂の前の「エサガチャ」のように、その場の猫に限ってあげられる場所もあるが、買ったエサをほかの場所であげるのは禁止だ。猫と仲良くなりたいなら、しゃがんで目線を下げ、ゆっくりまばたきをしてみよう。猫のゆっくりまばたきの記事も参考に。
Q. 東京から日帰りできる?
できる。ただし朝いちばんの新幹線でも9:00の船には間に合わないので、12:30の船で渡って15:30の船で戻る形になり、島にいられるのは2時間ほど。ゆっくり歩きたいなら石巻に前泊しよう。
Q. 船は予約できる?
できない。当日の先着順で、満席なら次の便になる。支払いは現金のみ。
Q. 子連れでも行ける?
行ける。小学生の船の運賃は片道640円。ただ坂がきつく、店も少ないので、飲み物とおやつは多めに。診療所は週2日しか開いていない。
Q. 犬を連れて行ける?
行けない。島は介助犬などを除き、犬の上陸を断っている。
Q. 雨の日はどうする?
小雨なら船は出るが、島には雨宿りできる場所が少ない。荒天だと直前に欠航したり、寄る港が変わったりする。網地島ラインの公式サイトやXで運航状況を確かめてから出かけよう。
合わせて行きたい周辺スポット
- 石ノ森萬画館(石巻市中瀬):漫画家・石ノ森章太郎の記念館。9〜17時、火曜休み。2026年10月19日から3階の工事で臨時休館の予定(2026年10月時点)
- みやぎ東日本大震災津波伝承館(石巻南浜津波復興祈念公園内):入館無料、9〜17時(最終入館16時30分)、月曜休み。石巻駅からバスで約12分
- 網地島:同じ網地島ラインで田代島の先にある島。網地白浜海水浴場は東北でも有数の透明度とされる
編集部のひとこと
猫に助けられてきた人たちが、猫を神様にした島。震災のあとは、その猫が島の復興を後押しした。猫を「かわいい」だけでなく「ありがたい」と思ってきた歴史に、猫好きとして頭が下がる。会いに行くなら、エサではなく敬意を持っていきたい。
関連項目