猫が箱に入るのは、四方を囲まれた狭い場所が身を隠して落ち着ける安全基地になるからだと考えられている。保護施設の研究では、隠れ箱がある猫は新しい環境でのストレスが早く下がった。段ボールの暖かさや、待ち伏せをする狩りの本能も理由に挙がる。
基本データ
| 箱の役割 |
中身 |
根拠の強さの目安 |
| 隠れ家 |
刺激が少なく落ち着ける |
保護施設の研究あり |
| 保温 |
段ボールは暖かい |
獣医師の解説 |
| 狩りの基地 |
待ち伏せに向いている |
獣医師の解説(仮説寄り) |
| 輪郭が好き |
線だけの四角にも座る猫がいる |
小規模な実験あり |
しくみ
囲まれていると安心する
日本の獣医師の解説では、四方が囲まれていると外からの刺激が少なく、身を隠して安心できることが、箱を好むいちばんの理由として挙がっている。体より小さい箱にぎゅうぎゅうに入るのも、囲まれている感じが安心につながるためだろう。
段ボールは暖かい
にゃんペディアの獣医師解説では、段ボールの保温性も理由に挙げている。猫が快適に感じる温度の範囲(熱的中性域)は30〜38℃ほどと、人よりかなり高いとされる。段ボールの中で丸くなると暖かい。
待ち伏せの本能
身を隠して獲物を待ち伏せする狩りの本能に合っている、という説明も獣医師の解説に共通している。
研究とデータ
保護施設の猫と隠れ箱
オランダのユトレヒト大学の研究チームは、2014年に Applied Animal Behaviour Science に研究を発表した。保護施設に来たばかりの猫19匹を、隠れ箱あり(10匹)となし(9匹)に分けて14日間観察すると、箱ありの猫は3〜4日目のストレススコアがはっきり低く、早く落ち着いた。14日目には両グループの差はなくなっていたので、箱は新しい環境に慣れるまでの時間を短くする道具と言えそうだ。
2019年には同じオランダで、23匹(12匹と11匹)を使ったランダム化比較試験も PLOS ONE に発表された。箱ありの猫は、ストレスの指標が低く安定するまでが7日早かった。一方、体重の減り方には意味のある差は出なかった(ほぼ全頭が体重を落とした)。
床の四角にも座る
アメリカ・ハンターカレッジのガブリエラ・スミスさんらは、2021年に「If I fits I sits」という題名の論文を発表した。床にテープで四角を描くと猫が座る、という「#CatSquare」の投稿が流行ったことをきっかけに、2020年夏、飼い主が自宅で協力する市民科学のかたちで実験した。
- 床にテープで描いた四角
- 「カニッツァの四角形」という錯視図形(角だけ描いてあるのに、人には四角が見える)
- 錯視にならないように角をずらした図形
これらを床に置いて、猫がどれに3秒以上座るかを動画で記録した。飼い主は猫に合図を送らないよう、サングラスをかけて参加した。申し込みは500人以上、最後までやり切ったのは30匹。そのうち9匹が図形の上に座り、選んだのは本物の四角か錯視の四角が中心だった。研究チームは、猫も人と似たように「ないはずの輪郭」を感じ取っているのでは、と考えている。30匹中21匹は座らず、その理由はわかっていない。
猫種・年齢・性別による違い
- 2019年の試験は、1〜10歳のヨーロピアンショートヘアに絞って行われた。1歳未満は成長で体重が変わるため、10歳超は年齢による認知機能の変化がストレスの評価に影響しうるため、対象から外されている。つまり子猫やシニアでの効果は、この試験からはわからない
- 同じ論文は、これまでの研究でストレス行動に性別の差は見られなかったとしている
- 床の四角に座るかどうかは、猫ごとに違った(30匹中9匹)
よくある誤解
- 「猫はみんな四角に吸い込まれる」:線の四角に座ったのは一部の猫だけ
- 「箱があれば慣れるのも体重も万全」:箱は落ち着くまでの時間を短くしたが、体重の減り方には差が出なかった
飼い主向けメモ
- 家に来たばかりの猫や、引っ越し直後の猫には、隠れられる箱を用意すると落ち着きやすい。保護猫を迎えたときにも役に立つ(はじめて猫を迎えるとき)
- 箱に入っている猫を無理に引っ張り出さない。「ここにいれば安全」と覚えてもらうのが大事
- 段ボールをかじる子もいるので、ボロボロになった箱は交換する
- 寒い時期に箱にこもるなら、部屋が寒いのかもしれない(猫の室温の目安)
- ふたが閉まる箱、袋、洗濯機など、出られなくなる入れ物は置かない・開けっぱなしにしない
関連項目
箱派、四角派、ぜんぜん興味ない派。どの派閥の猫も、同じようにかわいい。
出典・参考資料
※性格や体の特徴には個体差があります。健康について気になるときは、動物病院に相談してください。