瓶や鍋、段ボールにみっちり収まり、夏は床に平たく広がる。「猫は液体」はネットの定番ネタだが、液体っぽく見えるのには体のつくりの理由がある。すき間に合わせて曲がる骨格と、暑いときに体を伸ばして熱を逃がす寝相だ。
基本データ
| 項目 |
内容 |
| 骨の数 |
ヒトより約40本多い(差はおもに背骨としっぽ) |
| 背骨 |
骨どうしがゆるやかにつながり、どの方向にも曲がる |
| 鎖骨 |
とても小さく、肩の関節とつながっていない |
| 通れるすき間 |
「頭が通れば体も通る」と言われる |
| 平たく伸びる理由 |
暑いときの放熱 |
しくみ
骨格が柔らかい
アニコム損保の解説によると、猫の骨はヒトより40本ほど多く、その差はおもに背骨としっぽにある。背骨の骨どうしはゆるやかにつながっていて、どの方向にも曲がる。
さらに猫の鎖骨はとても小さく、ヒトのように肩の関節とつながっていない。肩甲骨も足の動きに合わせて動く。そのため頭が通れば体も通ると言われるほど柔らかい。狭い場所をすり抜けて獲物を追う体が、そのまま鍋や箱にも収まるわけだ。
暑いと伸びて、寒いと丸くなる
同じくアニコム損保の寝相の解説では、猫は暑いと手足を伸ばして体の熱を逃がし、寒いと丸くなって熱を逃がさないようにする。耳や足先には細い血管が多く、暑いときはそこが広がって熱を外に出し、寒いときは縮んで熱を守る。床にべたーっと広がっているのは、放熱の窓を全開にしている状態だ。
| 寝相 |
意味の目安 |
| くるっと丸まる(アンモニャイト) |
寒い。熱を逃がしたくない |
| 手足を伸ばして床に広がる |
暑い |
研究とデータ
「猫は液体か」を論じた物理学者
フランスのリヨン高等師範学校(ENS de Lyon)の物理学者マルク=アントワーヌ・ファルダンさんは、2014年に「On the rheology of cats(猫のレオロジーについて)」という短い論文を、レオロジー学会の会報(Rheology Bulletin)に書いた。レオロジーは、物がどう変形して流れるかを扱う学問だ。この仕事で、2017年のイグ・ノーベル賞(物理学賞)を受けている。
考え方の要点はこうだ。
- 液体とは「入れ物に合わせて形を変えるもの」
- 固体か液体かは、形が変わるのにかかる時間(緩和時間)と、観察している時間の比で決まる
- この比をデボラ数と呼び、1より大きいと固体っぽく、小さいと液体っぽくふるまう。名前は旧約聖書の「山々は主の前に流れた」という一節にちなむ
Scientific Americanの記事によると、論文では若い成猫の緩和時間を1秒から1分くらいと見積もっている。箱に5秒で収まる猫を1分眺めれば、デボラ数は1よりずっと小さい。つまりその観察では、猫は液体とみなせる。
猫種・年齢・性別による違い
- 年齢:Scientific Americanの記事では、子猫はよく動き回るので緩和時間が長くなるかもしれない、とされている
- 猫種・性別:骨格の柔らかさは猫に共通する特徴で、今回見た資料には猫種や性別による違いは書かれていなかった。長毛の大型猫も、短毛の雑種も、同じつくりをしている
よくある誤解
- 「猫は本当に液体」:もちろん溶けてはいない。物理学の話は、固体と液体の区別が観察する時間で変わる、という説明のための例えだ
- 「どんなすき間でも通れる」:頭が通るかどうかが目安。首が抜けなくなる筒や袋は危ない
飼い主向けメモ
- 床でべたーっと広がっているのは、暑さのサインのことがある。室温を見直すきっかけにする(猫に快適な室温)
- ぐったりして呼んでも反応が鈍い、口を開けてハアハアしている、というときは、くつろいでいるのではなく熱中症などの可能性もある。すぐ動物病院に相談する(すぐ動物病院へ行くべき猫の症状)
- フタが閉まる入れ物、首が抜けなくなる筒や袋は置かない
- 持ち上げるときは、胸の下とおしりを両手で支える
関連項目
どの猫も、容器を見つければ同じように収まる。この分野に猫種の壁はない。
出典・参考資料
※性格や体の特徴には個体差があります。健康について気になるときは、動物病院に相談してください。